気候変動と森林

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私の会社もテレワークが5月6日までとなりました。週末も自粛ということでなるべく家にいるようにしています。そんな時間がある時にこそ自分の行っている仕事の整理などもしてみたいと思います。

今、私の行っているプロジェクトで一番の課題は、気候変動における森林による温室効果ガスの吸収量を全世界で正確に把握するための方法を開発しようとしています。

京都議定書やパリ協定などの気候変動の枠組み条約においては、各国が自分たちの国において排出したり吸収したりした温室効果ガスの量を透明性高く報告する必要があります。

国連の気候変動枠組条約の事務局(UNFCCC)では、各国からの報告を集計し、地球全体としての二酸化炭素やメタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスの増減を管理していきます。これに関してちょっと簡単な動画を作成してみました。

各国の報告は正確を期す必要がありますが、その集計方式は国際的なガイドラインはあるものの、各国の集計方式の能力的な事情などもあり結果的に一律の基準になっていません。そこはどうしても各国の努力目標となってしまうため、強制力は発揮出来ずに、各国が独自にそれぞれの温室効果ガスの削減努力目標を国際的に提示すること事で、一律の削減目標は無理にしても、可能な限り透明性の高い目標を設定する事でみんな頑張りましょう、ということにしているのです。

各国の集計する温室効果ガスの排出量や吸収量は、国際的なガイドライン(IPCCによる)に沿って、網羅的に多くの分類について報告する必要があります。工場や自動車等のエネルギー分野、工業、農業、土地利用、林業、廃棄物、その他の間接的なもの、に大きく分けてそこからさらに細かい個々の排出量や吸収量を集計しています。

その詳細な報告書は、以下のリンクからご覧になれます。環境省が最終的に集計するのですが、その作業は外部委託されており、国立環境研究所の温室高ガスインベントリオフィスにて実施されています。年度毎に報告書が作成されます。

2019年度 日本国温室効果ガスインベントリ報告書

さて、大分前置きが長くなりましたが、この報告書には林業が特だしで掲載されています。ご存知の通り、森林は世界の陸域の約3割に分布しています。日本は特に国土の約7割を占めています。国土自体は狭いですが、割合としては森林大国なのです。

小学校で習いましたが、植物は主要な温室効果ガスである二酸化炭素を吸収して酸素を排出します。つまり、吸収源となっています。森林の分布や種類とその量を集計することは、どの程度温室効果ガスを吸収できるのかの能力を測定することになります。

2003年以降、日本の森林による温室効果ガスの吸収量は減少傾向にあります。これは戦後の植林が、この年の前後から自給率を増してきており、日本の森林は今かなりの供給過多状況になっているとのことです。つまり日本の森林は過去の人工林の造林が育ちきってしまい、吸収量が延びずに減少に転じてしまっている状況なのです。

日本の森林の現状(森林・林業学習館)

これは世界に比べても特異な状況であり、世界の主に熱帯の途上国は、WWFによると「毎秒サッカー場にして36個分の面積が消失」していると言われています。これは農地転用や焼き畑、違法な森林伐採などがありますが、最近ニュースでも有名になった米国カルフォルニアや豪州での大規模な森林火災にもよります。

それに加えて一方で、日本は森林が育った状態となっていて、今後は間伐や適切な森林経営に従って森林を有効活用しなければいけない時期と言われています。実は、この事実は意外にも知られていない気がします。

林業自体が最近担い手が少なくなってきており、日本の林野庁も予算の関係から中々思い切った政策も問題自体のアピールも出来ない現実があるのです。しかしながら、わかっている人はわかっていて、違法な業者が監視の届かない事を良い事に、日本国内においても違法伐採が増えてきている事実があります。

日本にもあった違法伐採!宮崎県は無法地帯?

日本の良質な木材が国外に違法に出ているという噂も聞こえてきます。こうした事実を前に人手が少なくなってきている林業を活性化しようと頑張っている活動もあるのですが、業界全体に活気がないように思います。これは林業の商売の参入が農業以上に垣根が高いし、かつ見返りが少ない事になると思われます。

このような状況を把握しながら、世界の森林を守り、日本の森林を適切に管理するための枠組み形成や管理ツールをどのように合意形成しながら整備できるか?という難題にここ最近取り組んでいます。

世界の森林を守る事で言えば、日本の高度な監視技術を活用して南米アマゾン、インドネシア、中央アフリカ(主にコンゴ民主共和国)の3大熱帯雨林地域の森林消失を防がねばなりません。これらの国は新興国あるいは発展途上国であり、自分たちでこれらの森林を管理する技術を十分に持ち合わせていないので、先進国が協力して資金や技術を提供していく必要があります。

日本では、JICAが技術協力によって以前からこれらの国々に対して森林の管理の手法とその設備投資を支援してきました。日本以外でも、欧米各国の援助機関がこぞって投資しています。

ブラジルにおいては、アマゾンにおいて違法伐採が多く、広大な土地なので取り締まるための人的リソースが中々工面できるものではありません。そんな中で日本からJCIAとJAXAが共同で開発した、人工衛星による森林の伐採検知システムを導入することによって違法伐採の減少に貢献出来ました。

こうしたツールを使って世界に貢献すると同時に、日本の森林の最適経営も行っていかなければなりません。日本の森林は、気候変動監視の吸収量として、防災の面においての風害や水害を守るための防水風林として、さらに加工木材の原料としての森林を考えながら、適切な森林経営が必須になってきている時代なのです。

最近では、ドローンやUAVを使った森林状況の調査が促進されています。林業業界を活性化させるべく、異業種であるGISのコミュニティやセンシング技術を使ったコミュニティが参入しつつあるのです。林業に長く従事されている方もおっしゃっていました。「我々も意識を変えていかないといけない時代になった。もっとより多くの他分野のコミュニティと連携して、林業の多様な在り方を考えていかなければならない」と。

気候変動と森林はなんとなく関連があると思われていますが、その中身は大変複雑で、かつ根が深い課題が多く詰まっています。SDGsで言えば、ゴール13及び15を一緒に関わる課題ですが、それだけにチャンスと信じています。

こうしたグローバルにも国内にも課題に取り組むチャンスがある気候変動と森林に対してより多くの方が関心を持って関わってくれる事を願っています。

 


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