気候変動データ(平年値)のアップデート

最近は気候変動の話題が真っ盛りですが、気候が変動していることはどう測っているのでしょうか?

専門家でなくても、何かを基準としてそこから気温が上がっているのか下がっているのかを測る事が必要なこと位はわかるかと思います。

良く「何年前と比較して」と言う形で過去の気温や降水量などと比較されますよね。その際に、「平年値」と言う言葉を聞いた事があるかと思います。

平年値とは「その時々の気象(気温、降水量、日照時間等)や天候(冷夏、暖冬、少雨、多雨等)を評価する基準として利用されるとともに、その地点の気候を表す値として用いられています。」(気象庁ホームページより)という定義になっています。

また、平年値は30年間の気温、降水量、日照時間、積雪の深さ、風向、風速、湿度、気圧などの平均値としており、これまで1981~2010年の観測値による平年値を使用していました。

そして、ちょうど今年は平年値を更新する年にあたり、1991~2020年の観測値による新しい平年値が作成されました。この平年値は5月19日から使用されます。天気予報で耳にする季節予報や天候の解説等で用いている各種平年値が新しくなるのです。

こうした定義は国連の世界気象機関(WMO)で定められており、参加各国に1991年~2020年を新たな平年値として採用するように呼び掛けています。欧米でも同じように新しい平年値が採用されています。

Updated 30-year reference period reflects changing climate

温暖化が急速に進む状況において、世界各国が平年値を最新にアップデートすることが必要になってきます。また、平年値をアップデートするだけではなく、過去の平年値との比較も行っていく必要があります。

パリ協定では、「産業革命以前(1850年~1900年)に比べて世界の平均気温を2度以上に上げない、可能な限り1.5度以内に抑える」、という至上命題がありますので、全世界における基準に則った観測データの維持管理と平年値のアップデートが大変重要になるのです。

最近では、観測技術やIT技術の発展によって、観測データの即時処理や大量解析を可能としています。

こうした大量の観測データの取り扱いが容易になってくれば、長期のデータのトレンドを比較が可能になっていきます。例えば、下の図はアメリカの1901年から2020年までの気温の平年値の変化具合を表しています。明らかに平均気温の上昇となっていることがわかります。

米国の平年値の更新について(米国海洋大気庁NOAA)

一方で、日本の平均気温は長期的にみて上昇しており、1980 年代後半から急速に上昇しています。その背景には、温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化による長期的な昇温傾向と数十年周期の自然変動の影響があると考えられています。地点によっては都市化も影響していると考えられているようです。

降水量は多くの地点で10%程度多くなるようです。降雪量は冬の気温上昇の影響などによって、多くの地点で少なくなるようです。また、さくらの開花について、ほとんどの地点で1~2日程度早くなるようです。

日本の平年値の更新について(気象庁)

ますます、地球の監視が大切になっている中で、日本も自国のモニタリングだけではなく、世界の気候監視に目を向けつつ、自国への影響をしっかりと把握していくことが必要ですね。

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気候変動適応をThink Localする!

変なタイトルですが、今回は「気候変動適応」について「Think Local」してみたいと思います。

そもそもですが、皆さんは「気候変動の適応」ってご存じでしょうか?気候変動は良く聞くけれど、それに「適応」するってどうするんだろう?ってイメージが湧きにくいかも?と想像する次第です。

その前にまずは気候変動の基本のおさらいです。

気候変動による温暖化

気候変動では温暖化の問題が大きく、温暖化を引き起こす二酸化炭素メタンなどの温室効果ガスを削減するために、各国において削減目標に沿って工場や自動車などの温室効果ガスの削減が実行されます。

具体的な削減の方法としては、工場のエネルギーを石炭からクリーンな電気に変えたり、自動車を電気自動車にしたりするものです。そうすれば二酸化炭素などが空気中に放出される量が減っていきます。

しかしながら、既に大気中に排出されてしまっていて、自然界などで吸収しきれない余分な温室効果ガスは、残念ながらこれからも温暖化に寄与してしまいます。そして、その予測はすでに科学者たちによってシミュレーションされています。

パリ協定と言えば「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」というものが有名です。

世界の温暖化研究成果を国際的に各国の政府レベルで取りまとめたIPCC第5次評価報告書によると、1880年から2012年の地球の平均気温の傾向を見ると、0.85℃上昇しています。下の図を参照ください。

出典)温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より

その後も平均気温は上昇傾向であり、特に過去50年の気温の上昇は、自然の変動ではなく、人類が引き起こしたものと考えられています。

そして、今後、温室効果ガス濃度がさらに上昇し続けると、地球の平均気温はさらに上昇すると予測されています。

2100年末には温室効果ガスの排出量が最も少なく抑えられた場合(RCP2.6シナリオといいます)でも0.3から1.7℃の上昇となります。

最も多い排出量となった最悪の場合(RCP8.5シナリオといいます)は、最大4.8℃の上昇と予測されています。下の図を参照ください。

出典)温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より

つまり、これからどれ程温室効果ガスの排出を削減しても、これまでの排出されたガスによって地球の平均気温は上昇してしまう訳です。

温暖化していくのはどうしようもないにしても、なんとかこれからの排出量を減らすことによって、気温の上昇をなるべく抑える。これが気候変動による温暖化の「軽減」です。

気候変動による温暖化では何が起こる?

地球の気温が上昇すると、その結果様々な地球上の環境の変化が現れてきます。そのいくつかをご紹介します。

暑くなる

当たり前ですが、気温が上昇するので人間の感じる気温も上昇します。そして、暑い日が多くなり熱中症も多くなります。日本の猛暑日の年間の発生日数が増加しているかがわかります。以下を参照ください。

出典)温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より

熱中症の危険情報も、夏の間はここ数年で天気予報の際に発表されるようになりました。そして、熱中症による死亡者数も増加しています。

出典)温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より

海面上昇

当然の事ながら、気温が上昇すれば地球上にある氷は溶けていくでしょう。氷が溶けて水になればそれが海面上昇につながるのは昔から良く言われていますね。

地球上の積雪、氷床、氷河などから実際に溶け出していることが確認されているのは有名ですよね。

実際にどのくらいの海面上昇があるのでしょうか?下の図を見ると1900年頃からおよそ19cm上昇しているのです。

出典)温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より

例えば、先ほどのRCP8.5のシナリオ(今世紀末2100年で4.8度上昇)の場合に、このまま海面上昇が続くと、海面は82cm上昇すると言われています。

例えば40cmだけ海面が上昇した場合でも、毎年高潮により浸水を受ける人口が世界全体で最大2億人も増加します。こうした被害を受ける人たちは標高の低い土地に住む経済的に貧しい人々が多く、熱帯・亜熱帯の島嶼国でその被害が大きくなります。

生態系の危機

2017年のレッドリスト(絶滅のおそれのある種のリスト)によると、地球温暖化が原因の一つとなって絶滅の危機に瀕している 野生生物は1750種以上と言われています。

ホッキョクグマもその一種であり、温暖化により北極の海氷が溶けることにより、生活圏が奪われ絶滅の危機にあることは典型的な例です。

陸の生物に限らず、海洋の生態系はもっと直接的な影響を受けます。特にサンゴは水温の変化に弱く、場所によっては死滅する可能性があります。

また、二酸化炭素が海洋に吸収されると海水の酸性化が進みます。植物プランクトン、動物プランクトン、サンゴ、貝類や甲殻類など、海洋生態系の基盤を担う多くの生物がその打撃を受けると予想されます。

森林火災が増える

乾燥化が進む地域では森林火災が増えると指摘されています。また、発生件数が増えるだけでなく、火災そのものが長期化し、地域の森林全体が消失する可能性もあります。

さらに、森林の焼失は、大気中への大量の二酸化炭素の放出となります。本来、二酸化炭素を光合成により吸収するはずの森林が排出源になっているのではないかと最近指摘されています。森林火災は世界の地球温暖化をさらに加速させるのです。

農業への打撃

気温や雨の降り方が変わると、土壌も変化します。これらの環境の変化は穀物生産を始めとする様々な食糧生産に影響を及ぼします。例えば、愛媛で作られていたみかんは北海道で作ることができるようになるかもしれません。しかし、そうした変化に耐えられるのは、小規模農家では難しくなるでしょう。

また、乾燥地域では干ばつが深刻となり、穀物生産の減少が進むことにより、世界の人口への食糧供給が既に深刻な問題となり始めています。

伝染病が広がる

熱帯などの伝染病を媒介する生物の分布域が変わることで、免疫をもたない人々に病気が広がる可能性もあります。また、新種の伝染病の発生の可能性もあります。

異常気象が襲う

既に感じている日々ですが、嵐や大雨などの異常気象が増えていきます。沿岸地域では洪水や浸水の水害がひどくなるでしょう。最近の日本の日降水量400mm以上の年間観測回数大雨の頻度は以下の通り増加傾向です。

出典)温室効果ガスインベントリオフィス
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より

人口が集中する都市域では、極端豪雨や内水洪水、沿岸洪水、地滑り、大気汚染などが年々被害が大きくなっていることを既に実感している時代です。

気候変動に適応する

我々の社会は、気候変動による上記の様々な影響効果はもはや多少なりとも避けようがない状況になっています。

そこで、国際社会はパリ協定で2つの大きな対策を講じることで合意しました。それが温室効果ガスの排出を抑える「緩和策」と、気候変動の影響に我々が適応するための「適応策」です。

緩和策はこれ以上温暖化を進めないために、温室効果ガスの排出を各国が独自の目標を定めて削減するのです。日本は「2050年までに温室効果ガスの実質排出をゼロにする」と公約しました。

複雑なのは適応策です。これは国全体というよりも地域の特性が大きな要素になるため、その実施は地方自治体が主体になります。

そのため、国際社会は適応策は各国が基本計画をまとめ、その実施計画は地方自治体が主導して決めて実施していくこととしています。

皆さんの住んでいる自治体(県市町村)での気候変動対策がどうなっているか是非とも検索してみてください。

例えば、私が住んでいるのは神奈川県横浜市ですが、神奈川県は既に気候変動適応計画を策定し、県全体での気候変動の影響評価とその対策をまとめています。

神奈川県の気候変動適応計画

横浜市は、計画までは至っていませんが方針が定められています。

横浜市の気候変動適応方針

このように、気候変動に適応するためには、自分たちが住む町のレベルでその事情に応じた対策を考えていかなければならないのです。

このため、各県は独自の気候変動適応センターを設置しています。既に自治体レベルで気候変動対策が具体化しつつあります。

例えば、あなたの住んでいる家が川のすぐそばにあるとしたら、その川がこの後何年かすると水位が上昇して川幅が大きくなり、家が飲み込まれてしまうと想像すると自分事として考えるでしょう。

それよりも、日本全体で一番わかりやすいのは、気温上昇でしょうか?このままの気温上昇が続けば、東京の熱帯夜の日数は、今は年間の約1割程度(50日程度)ですが、2100年には年間の約3割弱(100日程度)になる予想です。

こうなったときにクーラーだけで日々の生活が適応出来ていくのか怪しいと思いませんか?生活スタイルや家の構造なども変えていかなくてはいけなくなるのは必至です。

今は、県が対策を検討していますが、実行するのはやはり我々市民です。県などの自治体が市民にガイドラインを示さないといけませんが、それを浸透させて行動に移していくには長い時間がかかるでしょう。

そもそも、県に気候変動適応センターが出来たことすら知らない人が多いのではないでしょうか?その普及啓発を同時に行っていくべきではないでしょうか?

SDGsは浸透してきましたが、気候変動についてはまだ他人事のような感じがしますね。まずは、身近な興味を通じて少しそこから気候変動への適応を考えられればと思います。

先ほどの熱中症ですが、これにどのように対策するのか?と考えるのは一番自分事として考えられるでしょう。

私が考えるのは、まずは体質改善です。気温の上昇にも負けない体質を作っていくのが一つ考えられます。それには食生活や生活習慣を見直す必要があります。具体的なものはまだ未定ですが、これは新たな分野になるかと思います。

暑さ対策の製品は今でも沢山出ていますが、これらは一時的な対策であり根本対策ではありません。恒常的に気温が上昇していくのであれば、それに耐性できる人間自体が変わっていく必要があるはずです。

また、家の構造やライフスタイルも変えていく必要があります。仕事のやり方も変えていく必要があるでしょう。

大量消費の時代は既に過去のものと言えます。海洋プラスチックの問題もあり、リサイクルを真剣に考える必要があります。

環境省と国立環境研究所は、このように気候変動の適応の現状や対策についてインターネットで情報共有しています。A-PLAT(Adaptation Platform)と呼ばれるこのプラットフォームには国の取組、地域の適応、民間の適応、個人の適応などが掲載されています。

非常に良いと思うのは、この気候変動への適応という活動が地域を主体にしていることです。地方の活性化につながり地方の主体性を鼓舞することは、ひいては日本の活性化につながるかと思います。

そして、この活動の資産をベストプラクティスにして、今度はアジアへ展開していくことが期待されます。

私は、まずは身近なところで自分が住んでいる地域の適応を考えてみたいと思います。

そうした個人の活動や経験もシェアしていければいいですね!

 

 

 

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凄い量の黄砂が舞い上がる!

本日、世界気象機関(WMO)からのニュースですが、この10年で過去最悪レベルの黄砂がモンゴルと中国北部などで舞い上がっているとのニュースが出ています。

北京や大都市ではダストが空を覆い、視程が500m以下とのことです。モンゴルでは犠牲者も出ているとのこと。

これはモンゴルにあった猛烈な980hpaのサイクロンがゴビ砂漠の砂を巻き上げたのが原因のようです。巻き上げられた黄砂は強い北風に乗ってモンゴルに渡り、その後中国北部にストームとなって伝搬していきました。このストームはここ10年で最強のものだったようです。

この巻き上げられた砂はモンゴルと中国ではPM10というもので、10マイクロメートル以下の粒子という意味です。我々が良く聞くPM2.5は2.5マイクロメートル以下の粒子ですから、それよりも荒い砂の粒になります。巻き上げられたばかりの砂はまだ荒い状態なのですね。日本に上空で運ばれるに従って、細かくなってPM2.5になるのです。

PM10のままの粒子は中国とモンゴルを覆っているのですが、粗い粒子のままだとその被害は細かい粒子よりも大きくなります。

このようなダスト粒子は少ない量でも健康に被害を及ぼします。世界保健機関(WHO)によると、健康に影響を及ぼさない最低限のダスト粒子の量は、24時間平均で立方あたり50マイクログラム以下とのことです。

ところが今回の黄砂は北京やモンゴルなどの都市で、なんと立方あたり5000マイクログラム以上で、ピーク時には9000マイクログラムを超えていたとのことです。

このようなWHOの健康の許容値を超えるような濃度の黄砂が大都市を覆うと、そこに住む人の健康にも害を及ぼすでしょう。

この黄砂を巻き上げた強いサイクロンが問題であり、このサイクロンの強さの原因は気候変動によるものだと考えられる訳です。気候変動による影響が人々の健康に直接影響を及ぼす事例になります。

そして、この黄砂は明日には薄まるにしても日本にも一部届くのは偏西風により明白です。ニュースによると部分的であり、中国やモンゴルのような甚大な被害にはならないようですが。

ここ数年にかけて黄砂の日本への飛来も大きな問題になっているような気がします。年毎にどの程度黄砂が増えているのか調べてみるのも良いかもしれません。

黄砂に限らず、昨年は森林火災も各地で大規模なものが数多く発生しました。林野火災においても火災により大量の煙霧や有毒物質が発生し、それが大気の流れに乗って世界中に拡散していきます。

こうした気候変動による影響も複雑であり、気候変動のメカニズムを知ることが大切であり難しい問題です。

気候変動の解明は科学者でも大変ですが、それを市民に正しい情報として伝えるリテラシー向上も大変重要です。気候変動はもはや科学者に留まらず、市民レベルで対処していく必要があるからです。

気候変動はその影響を「軽減」する方策と、「適応」する方策に分類されます。軽減は温室効果ガスを削減するのがメジャーであり、パリ協定によって既に多くの国が削減目標を提示しています。

難しいのは適応で、気候変動によって気温上昇はこれからも続くと考えられるので、我々は自分の生活をどうしようもない予測に逆らわずに「適応」していく必要もあるのです。

これは適応に対しては、国が適応計画を作ります。その適応計画に従って、地域の事情を考慮した自治体レベルでも適応の対策を行う必要があります。既にいくつかの自治体では適応の対策を始めているところもあるようです。

日本の気候変動適応計画

例えば、北海道と沖縄では適応策はかなり異なると思います。北海道のじゃがいも農家は気候変動によってどうすればいいのか?という問題と、沖縄のサトウキビ農家の対策は違うからです。

是非、あなたの住んでいる市町村に気候変動の適応の対策についてインターネットなどで調べてみて下さい。そこから、あなた個人が何か出来るか考えてみるのもThink Global & Act Global(Localも!)の構想に合っていると思います。

黄砂のWMO記事原文リンク

 

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2050年の天気予報

猛暑到来ですね。日本列島は北海道を除いて連日猛暑日(最高気温が35度以上)の所が多くなりますので、皆さん熱中症には十分ご注意ください。

ところで、世界気象機関(WMO)が5年ほど前に面白い企画を実施しました。

WMOが「2050年の天気予報」を行う企画を行い、WMOの主要メンバー国に対して働きかけて、各国の主要ニュースメディアと人気の天気予報のキャスターと共同で、「実際に2050年になったつもりで天気予報を行う」動画を作成したのです。

日本はNHKが作成を行いました。以下、動画を貼り付けておきます。

これを見ると、2050年の9月23日までに、

・真夏日(最高気温が30度以上)が50日以上

・熱帯夜(最低気温が25度以上)が60日以上

・熱中症による死亡者が6500人以上!

・京都の紅葉の見ごろはクリスマス頃!

・海面水温の上昇で沖縄のサンゴの白化が深刻

・秋にはスーパー台風(中心気圧895hpa!最大風速70m/s!)が襲う!

という、とんでもない状況になっている事が予報されています。

しかし、これはIPCCの科学報告書に基づいた予想であり、SFではありません。

今日の様な猛暑日を体験すると、これから30年後にはそうなる可能性もあるかもしれないという気にもなってきます。

動画の後半では、温室効果ガスの排出がこのままの状況を維持する事の危険性を訴えています。

各国が気候変動に対するアクションを起こすように、前国連事務総長のバン・キムンのメッセージも最後に添えられています。

その他、アメリカ、ヨーロッパ各国、アフリカ、等、世界各国のキャスターによる動画があります。

まとめてどこかに置いてあるのかと思ったのですが、なさそうですので、YoutubeでWeather Forecast 2050で検索してみてください。

世界のキャスターやテレビ局の違いがあって、中々面白いです。

実は、この企画はWMOの広報担当が行ったのですが、私の知り合いでもあります。

その時に、日本のNHKとキャスターは素晴らしかった!と言っていました。

日本のきめ細かい、真面目で、高品質な文化を彼も感じたのでしょう。

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北極周辺が暑い!

最近では、気候変動による温暖化のニュースは途切れる事がありません。

ロシアのシベリア地域では、長期の卓越した熱波によりこれまでにない火災が発生しています。そして大量の温室効果ガスが同時に排出されています。それと同時にロシアの北極沿岸では、大規模な海氷が融解しているとのこと。

ノルウエイのスバルバード島にある人間が住む最北端の町ロングイールビュエンでは、7月25日に観測史上最高となる21.7度を記録しました。ノルウエイの気象局によると、この地の例年7月の平均気温は5.9度とのことだそうです。

今年1月から6月のシベリアの気温は平年より5度も高く、6月は10度も高かったようです。

シベリアのベルホヤンスクでは今年の6月20日に38度という、ロシアの気象水文局が1885年に観測を開始して以来の最高気温を記録しました。この熱波によりシベリアの針葉樹林では火災が多く発生しました。

©World Weather Attribution

図(シベリア地域の気温の比較):「2020年1-6月の平均気温」と「1981年から2010年の平均気温」の差、赤色が濃い程気温が高い変化であることを示す。

この長期の熱波の原因は、気象的な視点で見ると広大なブロッキング高気圧とジェット気流が北向きにシフトしたことにより暖気が流れ込んできたことによるものです。

しかしながら、気候学的にはこの現象は単なる一過性のものとしては扱われにくく、気候学者たちは人類の人為起源による気候変動の影響が関わっていると指摘しています。

下の図は、欧州宇宙機関(European Space Agency)のセンチネル衛星と呼ばれる地球観測衛星画像から得られた林野火災の状況のスナップショットです。多くの火災による煙が立ち上り、その煙が広大な地域に拡散していることがわかります。

©ESA

ロシアの連邦林野局によりますと、今回の火災でおよそ3百万ヘクタールが影響を受けたと報告されています。また、火災の幅は800kmにも及び、その北端は北緯71.6度まで及んでおり北極海沿岸の8kmまで迫っているとのことです。

また、この立ち上った煙は拡散して、有毒な大気汚染物質を周辺地域はもちろんのこと、大気の流れにのって地球規模で拡散させていきます。

さらに、6月のシベリアでの森林火災だけで56メガトンの二酸化炭素が放出されたという見積もりが報告されました。

シベリア地域を中心とした煙の拡散状況(動画)

また下の図は、欧州の研究機関が推定した、北極域における野火による二酸化炭素の排出量を推定した年毎のグラフですが、2019年だけで既に記録が更新されているのですが、2020年はそれを大きく上回る排出量となっています。

©Copernicus/ECMWF/EC

こうした事実が積み重なっていくと、今後2050年には、現在よりも気温が最低でも0.5度、最高で5度は上昇することが予想されています。

ちなみに、この排出量はどうやって算出したかと言うと、これだけの広大な火災を地上で計測するのは難しいので、人工衛星を使って延焼面積を測定し、そこから温室効果ガスの排出量を推定しています。

このように、気候変動による温暖化が進むと、森林火災⇒煙による大気汚染⇒二酸化炭素や地中からのメタンなど更なる温室効果ガスの排出海氷面積の減少⇒日射吸収の増大⇒海面温度上昇⇒生態系の変化(シロクマの絶滅危機)、など多岐に渡る影響が出てきます。

 

ところで、我々は気候変動を語る際に、このような負の連鎖が地球のどこかで日々起こっている事を、事実としてどの程度知っているでしょうか?

気候変動問題の場合には予測による意思決定には大きな権力が動くため、必ず肯定派と懐疑派がおり、客観的な事実と情報を定量的に把握することが重要となります。

気温や排出量、森林面積、海氷面積などの地球の診断には、人工衛星や気象観測網、森林調査、海洋観測船などの様々な測定器が使用されます。

これらの高価な測定器から得られるデータと情報を蓄積していき、品質管理をしっかりとして、研究者や一般に公開し、データ解析を行い、そららを様々な研究者同士で是非を議論し、最終的に一般や政治家に届けられます。

上記の過程の内で、少しでも不備がありデータの変更や改ざんがあると議論はあらぬ方向に行きます。

上記で書いた「56メガトンの排出量」ですが、これは実はまだ欧州の研究機関が発表した数値に過ぎません。例えば、アメリカの研究者は反対するかもしれませんし、分析手法によっては違う数値が出てくる可能性もあります。

気候変動の問題は、条約の交渉も重要ですが、それの基礎を支える現在と将来の予測に関するデータと情報の信頼性をどのように国際的にコンセンサスを得るのかも大きな問題です。

また、こうした観測のデータは大量に時間的に空間的に分解能高く取得できれば、それだけ精度が良い現状を把握できるだけではなく、モデルに組み込む事によって将来の予測の精度が上がります。

気象予報では、3日後の天気予報は8割以上の確率で当たる様になってきました。それはモデルの手法の向上と共に観測データの高分解能化、高精度化によるものです。

将来的に、気候変動予報が出来て気温が50年後に何度上がるか、信頼できるようになればと思います。それにはまだまだ研究も技術もデータも足りないのです。

参考情報

世界気象機関(World Meteorological Organization)

欧州宇宙機関(European Space Agency)

 

 

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アジアモンスーンの変動による洪水被害の拡大

九州では梅雨の梅雨前線により線状降水帯が発生し、集中豪雨による洪水被害が続いています。

近年は「観測史上初」とか、「過去50年以内に例を見ない」などという表現が多く出てくる程の異常な降水量であり、地元の方々も経験したことのない大雨がここ数年続いているようです。

通常、降水量は目的別に1時間雨量、3時間雨量、12時間雨量、24時間雨量、振り始めからの積算雨量、という形で目的別に使い分けられます。

例えば、都市のゲリラ豪雨では30分から1時間程度の集中豪雨ですので1時間雨量が使われます。

普通夏の午後によくある雷雨で大体1時間で20~50mm以内ですが、これでいわゆるどしゃ降りの雨というものになります。1時間50mmを超えると、低地での浸水やがけ崩れの危険が高まります。

今回の九州の豪雨の場合、梅雨前線により形成される積乱雲が、同じ場所で次から次へと生成しては消えていくパターンとなっており、1時間でも50mmを超える雨量ですが、それが3時間以上で観測史上1位の降水量となっている場所が多いのです。

1時間でも50mmを超えるのに、それが何時間も続くほどの降水量になると土砂災害の危険や、河川の増水や氾濫の危険度も増してきます。実際に、九州のみならず全国で84河川で氾濫が確認できているとのことです。

なぜ、近年この時期に大雨が降る様になったのでしょうか?このメカニズムは「アジアモンスーン」というアジアにおける水と大気の循環系によって解明が進められています。

アジアモンスーンとは、インド洋からインドを抜けてチベット高原、中国を抜けて東端となる日本までを含む季節風変化のメカニズムです。

梅雨の季節になると、インド洋などの南の海と大陸の温度差が大きくなり、海上からの湿った空気が大量に大陸に流れ込みます。そして、その湿った空気が中国を抜けてはるか東の日本まで運ばれてくるのです。

アジアモンスーンのメカニズム図

©Zhanqing Li, et al

詳しい説明は専門書がたくさんありますから避けますが、この季節風による湿った空気が例年よりも大量に入ってきて、なおかつ北からの季節風と衝突して積乱雲を形成します。近年このアジアモンスーンの変化が大きくなっているのがわかっています。

今回、世界気象機関(WMO)によると、日本だけではなく、中国やインドでも洪水被害が起きている事が報告されています。インドでは北部にかけて最高レベルの洪水警戒が出ています。中国では6月から揚子江流域で洪水被害が多発しており、数百万人に影響が出ています。

気候モデルによると大気中のCO2濃度が増えると、地球上において強い雨の頻度が増え、弱い雨の頻度が減る、という予測を立てています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、特にこのアジアモンスーンの地域では今後の降水量変化予測として増加傾向にあるとしています。

実は、このアジアモンスーンの地域にはおよそ世界の人口の約60%が住んでいるとのこと。今後洪水被害が増加するとなると世界的にも深刻な状況になっていくかもしれません。

国内においては、「気候危機」の状況がようやく浸透し始め、自治体レベルでの対策が開始されています。こうした洪水被害に対する治水対策などはもはや「気候変動対策」として地域レベルでの動きになっています。

自然科学の分野でのこうした気候危機のメカニズムが解明されていますが、その科学の解明の成果が我々一般の生活にどう生かされるかが今問われていると思います。

IPCCの活動はまさにそうしたものでありますが、まだまだ一般への認知度や分かりやすさという観点で難が多いと思います。科学や研究の成果を分かりやすく誤解のない様に誰にでも説明できる機能が重要であり必要だと思っています。

参考文献

Aerosol and monsoon climate interactions over Asia

気象庁ホームページ

 

 

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環境白書とGCPからの報告

2020年版の環境白書が閣議決定されました。2020年版「環境・循環型社会・生物多様性白書」が正式な名称です。

概要版:2020年版「環境・循環型社会・生物多様性白書」

一言で言うと、地球温暖化の影響と考えられる災害が深刻化している現状を「気候変動」から「気候危機」と言い直しており、対策を強化するよう呼びかけています。

特に2019年は、国内では豪雨や猛暑、房総半島台風、東日本台風など、海外では欧州の記録的な熱波、北米のハリケーン災害、豪の広範囲の森林火災、インドやミャンマー等の洪水災害がニュースでも大きく取り上げられていました。

直近20年間の気候関連の災害による被害額は、合計2兆2450億ドルとなっており、その前の20年間に比べ2.5倍になっているという状況です。

一方で、コロナの感染防止策として広がったテレワークやウェブ会議の有効性が示されたことによって、CO2排出削減や働き方の改革等につながるもので、今後も強靭な経済活動につながる様に継続すべき、と提言されています。

そのコロナの感染防止策で世界的なロックダウンにより、人間活動が停滞したことにより人為起源の温室効果ガスの排出がどの程度減ったかについて、国際的な温室効果ガスの研究のコミュニティであるGCP(Global  Carbon Project)が報告を出しています。

コロナ自粛中の世界のCO2排出量の一時的な削減

以下の要約となります。

2019年の平均に比べて、2020年4月はグローバルの日々平均で約17%減少(その半分弱は地上交通による)

©Le Quéré et al. Nature Center Change (2020), Global Carbon Project

計算方式は、世界の約97%の排出量となる69か国に対して行っており、独自の定義に基づく自粛のレベル0~3に応じたCO2の変動量を上の図にもある6つの経済活動のセクター(居住、公共、航空、エネルギー、産業、地上交通)に分けて計算しています。

上記の図、1月下旬から始まった自粛活動により、各経済セクターのCO2削減が増えていきました。3月上旬近辺で一時的に削減量が減っていますが、これは中国が自粛を緩和し始めたからです。

その後、3月中旬以降には世界的に自粛が広まり、4月上旬に最大ピークとなる17%まで削減となりました。居住セクターはテレワークなどでCO2排出が増えていますが微々たるものです。その他のセクターは削減していて、最も多いのは地上交通の排出削減でした。

©Le Quéré et al. Nature Center Change (2020), Global Carbon Project

上の図は、自粛レベル1-3の時間変化によるCO2排出量の変化がわかります。1月下旬から中国を中心に始まった自粛は、3月上旬で緩和されましたが、3月中旬以降は世界的に広がり、そのレベルも厳しくなったことがわかります。

今後の事ですが、2020年のCO2排出量がどのような変化となるかは、自粛のレベルとその期間によるとされています。シミュレーションでは、大まかに6月中旬まで自粛が続く場合には2019年に比べて約4%程度の減、2020年末までレベル1の自粛が続く場合には、約7%程度の減となるであろうと予測しています。

また、今回の前例のない世界的な自粛によって得られたCO2の削減は非常に大きいもので、2006年の排出レベルに匹敵するものでした。しかし、それ以降の約14年間の排出の増加は非常に大きなものであり、パリ協定の実現に向けた削減の達成にはまだまだ足りないとのことです。

今後の自粛と生活スタイルの変化により、どのようにCO2削減が変化していくのか、観測モニタとデータ分析は重要であり科学的に十分精査された助言が重要になっていくと思いました。

また、テレワークでのCO2増加は微々たることは予想できましたが、そうなると仕事と生活のスタイルも大きく見直した方が良いかもしれませんね。

オフィスを省力化していき、都市部への通勤を減らして、エネルギー効率的に最適な社会環境を実現していくのは、次の社会環境の変革に必要な政策になっていくと強く思いました。

みんなが東京に集まる必要はもうなくなってきているので、テレワークで可能な仕事であれば、田舎で農業をしながらでも出来る社会を作るべきなのでしょう。特に、それは人口減の激しい日本で兼業も踏まえた生産性の向上を戦略的に進める必要があると思います。

多分、それは政策提言していくと同時に、個人がそれぞれ動いていくべきことなのだと思います。私も今後は極力テレワークで仕事をする方向で検討しています。そして、そこで出来た余裕の時間を他の仕事や社会貢献に振り分けていく事を考えています。

あなたはどう思われますか?

 

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「アースデイ」に想う

今日4月22日はEarth Day「地球の日」です。

1969年に国連のユネスコが提唱し、その後アメリカの上院議員の環境問題に関する討論への呼びかけから全世界に普及したものです。

今ほど、地球の事を考えるのに良い時間はないのではないでしょうか?

これまでも、気候変動、生態系の絶滅危機、砂漠化、公害、等々、課題は多かったのですが、我々人間は身に迫らないと解決しようとしない種族のようで、むしろ経済活動の発展に重点が置かれているようになっていました。

新型コロナウイルスによる世界の経済活動の停滞は、良い水を差す結果になったと言えば、それまでですが、この先もどうなるか不透明ですし、もしかしたら人類存亡の危機に発展するとも限りません。

Earth Dayも50周年ということで、その発端の一助として1968年にアポロ宇宙飛行士が月から地球の出を撮影し、外から初めて人類が地球を俯瞰出来た経験から想起されたアイデアとも言われています。

アポロから想起された経緯もあり、NASAではこの日は特別なビデオを上映していました。

NASA@HomeでのEarthDayレクチャー

人類の経済活動は、地球とその環境系と生態系の基盤の上に成り立っている、という事が今回身に染みてわかったかと思います。

しかし、人間は生きていくだけで業と言われているように、生きる事それ自体が環境も生態系も変化させます。問題は、人間が叡智を発揮して、どうやって経済活動と環境・生態系を共存できるか?という課題を解決していかないといけない、という事かと思います。

今の日本は明らかに経済政策優先であり、環境や生態系の保全はプライオリティは低い状況です。アメリカもそう。欧州は気候変動政策をはじめとして優先度が高いです。中国は新興国であり人口多いし、土地も広いので、先進国が望むような政策は実現しずらい。南米やアフリカなどの広大な土地を有する新興国・途上国はそれ以上に実現しずらい、という状況です。

改めて、日本はこうした地球規模の課題に対して何が出来るのでしょうか?日本の政策を経済成長優先からグローバル政策に転換してはどうかと思っています。グローバルの中での日本という位置づけを十分意識して、様々な分野で日本が世界の主導的な役割を発揮する、それは環境や生態系などの分野を主導に置きながら、国内は経済成長を実施していく。

今、世界は鎖国モードの国が増えています。1国主体の経済を中心に物事を見てしまうと、どうしてもそうならざるを得ないと思われます。最初からグローバルありきで政策を考えていく必要があるのではないでしょうか?

その意味も込めて、再度私は「Think Global & Act Global」を唱えたいと思います。


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気候変動と森林

私の会社もテレワークが5月6日までとなりました。週末も自粛ということでなるべく家にいるようにしています。そんな時間がある時にこそ自分の行っている仕事の整理などもしてみたいと思います。

今、私の行っているプロジェクトで一番の課題は、気候変動における森林による温室効果ガスの吸収量を全世界で正確に把握するための方法を開発しようとしています。

京都議定書やパリ協定などの気候変動の枠組み条約においては、各国が自分たちの国において排出したり吸収したりした温室効果ガスの量を透明性高く報告する必要があります。

国連の気候変動枠組条約の事務局(UNFCCC)では、各国からの報告を集計し、地球全体としての二酸化炭素やメタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスの増減を管理していきます。これに関してちょっと簡単な動画を作成してみました。

各国の報告は正確を期す必要がありますが、その集計方式は国際的なガイドラインはあるものの、各国の集計方式の能力的な事情などもあり結果的に一律の基準になっていません。そこはどうしても各国の努力目標となってしまうため、強制力は発揮出来ずに、各国が独自にそれぞれの温室効果ガスの削減努力目標を国際的に提示すること事で、一律の削減目標は無理にしても、可能な限り透明性の高い目標を設定する事でみんな頑張りましょう、ということにしているのです。

各国の集計する温室効果ガスの排出量や吸収量は、国際的なガイドライン(IPCCによる)に沿って、網羅的に多くの分類について報告する必要があります。工場や自動車等のエネルギー分野、工業、農業、土地利用、林業、廃棄物、その他の間接的なもの、に大きく分けてそこからさらに細かい個々の排出量や吸収量を集計しています。

その詳細な報告書は、以下のリンクからご覧になれます。環境省が最終的に集計するのですが、その作業は外部委託されており、国立環境研究所の温室高ガスインベントリオフィスにて実施されています。年度毎に報告書が作成されます。

2019年度 日本国温室効果ガスインベントリ報告書

さて、大分前置きが長くなりましたが、この報告書には林業が特だしで掲載されています。ご存知の通り、森林は世界の陸域の約3割に分布しています。日本は特に国土の約7割を占めています。国土自体は狭いですが、割合としては森林大国なのです。

小学校で習いましたが、植物は主要な温室効果ガスである二酸化炭素を吸収して酸素を排出します。つまり、吸収源となっています。森林の分布や種類とその量を集計することは、どの程度温室効果ガスを吸収できるのかの能力を測定することになります。

2003年以降、日本の森林による温室効果ガスの吸収量は減少傾向にあります。これは戦後の植林が、この年の前後から自給率を増してきており、日本の森林は今かなりの供給過多状況になっているとのことです。つまり日本の森林は過去の人工林の造林が育ちきってしまい、吸収量が延びずに減少に転じてしまっている状況なのです。

日本の森林の現状(森林・林業学習館)

これは世界に比べても特異な状況であり、世界の主に熱帯の途上国は、WWFによると「毎秒サッカー場にして36個分の面積が消失」していると言われています。これは農地転用や焼き畑、違法な森林伐採などがありますが、最近ニュースでも有名になった米国カルフォルニアや豪州での大規模な森林火災にもよります。

それに加えて一方で、日本は森林が育った状態となっていて、今後は間伐や適切な森林経営に従って森林を有効活用しなければいけない時期と言われています。実は、この事実は意外にも知られていない気がします。

林業自体が最近担い手が少なくなってきており、日本の林野庁も予算の関係から中々思い切った政策も問題自体のアピールも出来ない現実があるのです。しかしながら、わかっている人はわかっていて、違法な業者が監視の届かない事を良い事に、日本国内においても違法伐採が増えてきている事実があります。

日本にもあった違法伐採!宮崎県は無法地帯?

日本の良質な木材が国外に違法に出ているという噂も聞こえてきます。こうした事実を前に人手が少なくなってきている林業を活性化しようと頑張っている活動もあるのですが、業界全体に活気がないように思います。これは林業の商売の参入が農業以上に垣根が高いし、かつ見返りが少ない事になると思われます。

このような状況を把握しながら、世界の森林を守り、日本の森林を適切に管理するための枠組み形成や管理ツールをどのように合意形成しながら整備できるか?という難題にここ最近取り組んでいます。

世界の森林を守る事で言えば、日本の高度な監視技術を活用して南米アマゾン、インドネシア、中央アフリカ(主にコンゴ民主共和国)の3大熱帯雨林地域の森林消失を防がねばなりません。これらの国は新興国あるいは発展途上国であり、自分たちでこれらの森林を管理する技術を十分に持ち合わせていないので、先進国が協力して資金や技術を提供していく必要があります。

日本では、JICAが技術協力によって以前からこれらの国々に対して森林の管理の手法とその設備投資を支援してきました。日本以外でも、欧米各国の援助機関がこぞって投資しています。

ブラジルにおいては、アマゾンにおいて違法伐採が多く、広大な土地なので取り締まるための人的リソースが中々工面できるものではありません。そんな中で日本からJCIAとJAXAが共同で開発した、人工衛星による森林の伐採検知システムを導入することによって違法伐採の減少に貢献出来ました。

こうしたツールを使って世界に貢献すると同時に、日本の森林の最適経営も行っていかなければなりません。日本の森林は、気候変動監視の吸収量として、防災の面においての風害や水害を守るための防水風林として、さらに加工木材の原料としての森林を考えながら、適切な森林経営が必須になってきている時代なのです。

最近では、ドローンやUAVを使った森林状況の調査が促進されています。林業業界を活性化させるべく、異業種であるGISのコミュニティやセンシング技術を使ったコミュニティが参入しつつあるのです。林業に長く従事されている方もおっしゃっていました。「我々も意識を変えていかないといけない時代になった。もっとより多くの他分野のコミュニティと連携して、林業の多様な在り方を考えていかなければならない」と。

気候変動と森林はなんとなく関連があると思われていますが、その中身は大変複雑で、かつ根が深い課題が多く詰まっています。SDGsで言えば、ゴール13及び15を一緒に関わる課題ですが、それだけにチャンスと信じています。

こうしたグローバルにも国内にも課題に取り組むチャンスがある気候変動と森林に対してより多くの方が関心を持って関わってくれる事を願っています。

 


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メルケル首相の国民への演説に学ぶ

欧州は未だコロナの影響が多大であり、各国の国民生活に制限が課せられています。

ドイツではメルケル首相が国民に対して特別に演説を行いました。国民に正確にそして適格に事実を伝え、何をすべきかの方向性、そして国が万全の体制でサポートすることを保証しています。

ロックダウンが行われている欧州の都市でのこの国民への演説は、まだ予断を許さない日本の我々も一度目を通しておくべきものであると強く思います。心構えのためのものです。

2020年3月18日 ドイツメルケル首相 国民への呼びかけ

この状況下で正確な情報と知識は重要であり、かつまた不安を軽減するための心のケアは必須です。

日本も色々な批判や不満はありますが、良く頑張っていると思います。ただ、先行きが不透明な状況で、日本よりも先に爆発的な拡散となってしまった欧米の対応は見ておく必要があります。

私も各国の仕事のパートナーとの連絡も行いながら、世界の状況を自分なりに把握して、正確でかつ有益な情報を提供出来ていければと考えています。