北極周辺が暑い!

最近では、気候変動による温暖化のニュースは途切れる事がありません。

ロシアのシベリア地域では、長期の卓越した熱波によりこれまでにない火災が発生しています。そして大量の温室効果ガスが同時に排出されています。それと同時にロシアの北極沿岸では、大規模な海氷が融解しているとのこと。

ノルウエイのスバルバード島にある人間が住む最北端の町ロングイールビュエンでは、7月25日に観測史上最高となる21.7度を記録しました。ノルウエイの気象局によると、この地の例年7月の平均気温は5.9度とのことだそうです。

今年1月から6月のシベリアの気温は平年より5度も高く、6月は10度も高かったようです。

シベリアのベルホヤンスクでは今年の6月20日に38度という、ロシアの気象水文局が1885年に観測を開始して以来の最高気温を記録しました。この熱波によりシベリアの針葉樹林では火災が多く発生しました。

©World Weather Attribution

図(シベリア地域の気温の比較):「2020年1-6月の平均気温」と「1981年から2010年の平均気温」の差、赤色が濃い程気温が高い変化であることを示す。

この長期の熱波の原因は、気象的な視点で見ると広大なブロッキング高気圧とジェット気流が北向きにシフトしたことにより暖気が流れ込んできたことによるものです。

しかしながら、気候学的にはこの現象は単なる一過性のものとしては扱われにくく、気候学者たちは人類の人為起源による気候変動の影響が関わっていると指摘しています。

下の図は、欧州宇宙機関(European Space Agency)のセンチネル衛星と呼ばれる地球観測衛星画像から得られた林野火災の状況のスナップショットです。多くの火災による煙が立ち上り、その煙が広大な地域に拡散していることがわかります。

©ESA

ロシアの連邦林野局によりますと、今回の火災でおよそ3百万ヘクタールが影響を受けたと報告されています。また、火災の幅は800kmにも及び、その北端は北緯71.6度まで及んでおり北極海沿岸の8kmまで迫っているとのことです。

また、この立ち上った煙は拡散して、有毒な大気汚染物質を周辺地域はもちろんのこと、大気の流れにのって地球規模で拡散させていきます。

さらに、6月のシベリアでの森林火災だけで56メガトンの二酸化炭素が放出されたという見積もりが報告されました。

シベリア地域を中心とした煙の拡散状況(動画)

また下の図は、欧州の研究機関が推定した、北極域における野火による二酸化炭素の排出量を推定した年毎のグラフですが、2019年だけで既に記録が更新されているのですが、2020年はそれを大きく上回る排出量となっています。

©Copernicus/ECMWF/EC

こうした事実が積み重なっていくと、今後2050年には、現在よりも気温が最低でも0.5度、最高で5度は上昇することが予想されています。

ちなみに、この排出量はどうやって算出したかと言うと、これだけの広大な火災を地上で計測するのは難しいので、人工衛星を使って延焼面積を測定し、そこから温室効果ガスの排出量を推定しています。

このように、気候変動による温暖化が進むと、森林火災⇒煙による大気汚染⇒二酸化炭素や地中からのメタンなど更なる温室効果ガスの排出海氷面積の減少⇒日射吸収の増大⇒海面温度上昇⇒生態系の変化(シロクマの絶滅危機)、など多岐に渡る影響が出てきます。

 

ところで、我々は気候変動を語る際に、このような負の連鎖が地球のどこかで日々起こっている事を、事実としてどの程度知っているでしょうか?

気候変動問題の場合には予測による意思決定には大きな権力が動くため、必ず肯定派と懐疑派がおり、客観的な事実と情報を定量的に把握することが重要となります。

気温や排出量、森林面積、海氷面積などの地球の診断には、人工衛星や気象観測網、森林調査、海洋観測船などの様々な測定器が使用されます。

これらの高価な測定器から得られるデータと情報を蓄積していき、品質管理をしっかりとして、研究者や一般に公開し、データ解析を行い、そららを様々な研究者同士で是非を議論し、最終的に一般や政治家に届けられます。

上記の過程の内で、少しでも不備がありデータの変更や改ざんがあると議論はあらぬ方向に行きます。

上記で書いた「56メガトンの排出量」ですが、これは実はまだ欧州の研究機関が発表した数値に過ぎません。例えば、アメリカの研究者は反対するかもしれませんし、分析手法によっては違う数値が出てくる可能性もあります。

気候変動の問題は、条約の交渉も重要ですが、それの基礎を支える現在と将来の予測に関するデータと情報の信頼性をどのように国際的にコンセンサスを得るのかも大きな問題です。

また、こうした観測のデータは大量に時間的に空間的に分解能高く取得できれば、それだけ精度が良い現状を把握できるだけではなく、モデルに組み込む事によって将来の予測の精度が上がります。

気象予報では、3日後の天気予報は8割以上の確率で当たる様になってきました。それはモデルの手法の向上と共に観測データの高分解能化、高精度化によるものです。

将来的に、気候変動予報が出来て気温が50年後に何度上がるか、信頼できるようになればと思います。それにはまだまだ研究も技術もデータも足りないのです。

参考情報

世界気象機関(World Meteorological Organization)

欧州宇宙機関(European Space Agency)

 

 

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世界の森林資源評価報告(FRA)2020年版の概要

先日、世界食糧農業機関(FAO)が世界の「森林資源評価報告(FRA)2020年版」というものを発行しました。

FRAとはForest Resource Assessmentの略です。

FAOは1946年から世界の森林資源について、定期的にメンバー国からの報告をもとに評価報告を実施してきました。

定期的に世界の森林資源量の傾向がわかる事によって、各国や世界の様々な森林資源の活用や森林化のための意思決定の参考となる情報として活用されています。

もちろん、最近では気候変動における森林の温室効果ガス(特に二酸化炭素)の吸収における役割が大変重要視されていますので、このFRAも、ますます重要な情報となってきているのです。

1990年からは5年毎に報告を実施しており、今回の2020年の報告には1990年から2020年のデータが使用されています。

森林は各国ごとにその定義が異なる事が多いため、FRAではFAOが187の国や自治区から出てくる森林の定義や集計手法などの情報を統一基準に定めています。

今回は、その報告のエッセンスをご紹介したいと思います。報告書は以下のサイトにあります。

森林資源評価報告(FRA)2020年版



森林は世界の陸地のおよそ三分の一を占めている

森林の面積はおよそ40億haでありおよそ世界の陸地の31%です。その内、45%が熱帯林であり、北方林が27%、温帯林が16%、亜熱帯林が11%となっています。

およそ54%の森林がたったブラジル、中国、ロシア、米国、カナダの5つの国で占められています。

森林は減少しているが、その割合は減ってきている

1990年以降世界では1.78億haの森林が減少しました。これはおよそ日本の4.6倍の面積です。

「森林減少」と言うと伐採による減少が主ですが、「正味の森林変化」は植林や天然林の拡張なども含められ、それらのバランスで全体の評価を見ることになります。

経年変化では、1990年から2000年は毎年780万haの減少、2000年から2010年は毎年520万haの減少、2010年から2020年は毎年470万haの減少となっており、減少率が減ってきていることがわかります。

アフリカが正味の森林減少では最も大きい

地域別にみると、2010年から2020年の間ではアフリカが390万haともっとも大きな森林減少となっています。南米は260万haの減少で二番目に大きな減少となっている。

アフリカはここ30年間で森林減少が増加している。南米はこの10年間で半分以上減少率が減っています。

アジアは2010年-2020年で最も森林増加となっています。オセアニア地域と欧州がそれに続いています。しかし、アジアと欧州の増加率は2000-2010年に比べるとかなり減っています。

9割以上の森林は天然再生している

およそ97%(37.5億ha)の森林は天然再生しており、7%(2.9億ha)が植林となっています。

過去30年間で天然再生の割合は減少しています。一方で植林は増加しています。

7億haが保護区となっている

南米が約31%が保護区となっており最大の地域となっている。1990年以降約1.9億haの森林が新たに保護区となりました。しかし、近年その増加傾向は小さくなってきています。

原生林は約11億ha

ブラジル、ロシアとカナダがその内の約61%を占めています。原生林も1990年以降約8100万ha減少しているが、近年はその減少率が減っています。

20億haの森林において管理計画がある

欧州が96%で最も高く、アジアが64%、北中米が59%、オセアニア地域が31%、アフリカが24%、南米が17%となっています。

森林火災は熱帯地方で広がる攪乱

昨年から今年はカリフォルニア、ブラジルとオーストラリアの林野火災がニュースでも大きく取り上げられて大規模で記憶に新しいですが、森林火災では単に木が燃えるだけではなく、そこに住む様々な生態系も消失させてしまいます。

2015年には9800万haの熱帯林が火災の影響を受けました。これは全世界の森林のおよそ4%に想定します。

多くの森林は国有林であるが私有林は増加している

73%が公的な所有物であり、22%が私的所有となっています。私有林の割合がもっとも多いのはオセアニア地域でおよそ48%、北中米と南米が同等で40%強となっています。

1990年から国有林の権利を民間ビジネスや研究所や各機関、そして少数民族や不部族に譲渡する動きが増加しています。

世界の森林成長率は減少している

1990年は5600億立方メートルであった世界の森林の総成長量は、2020年には5570億立方メートルに減少しました。これは森林面積が減少したことによります。

一方で、単位面積当たりの成長量は逆に増加している。1990年は132立方メートルから2020年は137立方メートルに増加しました。

世界の森林はおよそ606ギガトンの生体バイオマスを保有しています(地上と地下を合わせて)。59ギガトンは枯死のものです。トータルのバイオマスは1990年から減少していますが、単位面積の量は増加しています。

森林の炭素蓄積量が減少している

森林の炭素蓄積量は、44%が木の生体バイオマス、45%が土壌生体物質、残りが枯死木、リター(落葉落枝の堆積物)から構成されています。

炭素蓄積量は1990年は668ギガトンから2020年は662ギガトンと減少しています。一方で、炭素密度は1ha当たり1990年は159トンから163トンに増加しています。

全森林の約30%が生産利用されている

世界の11.5億haが主として原材料としての木の生産のために利用されています。その他に7.5億haが原材料を含む多目的に利用されています。

1990年以降、原材料を主とする利用は安定していますが、多目的利用は減少傾向にあります。

全森林の約10%は生態系保護に利用されている

1990年は1.1億haだった生態系保護区としての森林も、2020年は4.2億haに増加しました。しかし、近年その増加率は減ってきています。

土壌と水系を保護する森林は増加している

1990年は1.2億haだった土壌と水系の保護区としての森林は、2020年は3.4億haに増加しました。

1.9億haの森林は公共サービスとなっている

レクレーション、観光、文化保護、研究林、スピリチュアルサイトとして約1.9億haの森林が確保されています。その割合は年々増加しています。

“This translation was not created by the Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO). FAO is not responsible for the content or accuracy of this
translation. The original [Language] edition shall be the authoritative edition.”



以上が報告書のエッセンスですが、いかがでしたでしょうか?

私が一番関心あるのが、やはり気候変動に絡んで、森林の炭素量の蓄積量がどのように変化しているかです。減少はしているものの、減少の割合も減少しているとのことで少しづつ各国が努力をし始めているのかな?と思われます。

しかし、まだまだ足りない、ということでしょう。気候変動で森林は一つのわかりやすくかつ重要な指標になります。しかし、それを管理したり削減を止めるのは、やはり難しいのです。

参考図書

 

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気候変動と森林

私の会社もテレワークが5月6日までとなりました。週末も自粛ということでなるべく家にいるようにしています。そんな時間がある時にこそ自分の行っている仕事の整理などもしてみたいと思います。

今、私の行っているプロジェクトで一番の課題は、気候変動における森林による温室効果ガスの吸収量を全世界で正確に把握するための方法を開発しようとしています。

京都議定書やパリ協定などの気候変動の枠組み条約においては、各国が自分たちの国において排出したり吸収したりした温室効果ガスの量を透明性高く報告する必要があります。

国連の気候変動枠組条約の事務局(UNFCCC)では、各国からの報告を集計し、地球全体としての二酸化炭素やメタン、亜酸化窒素などの温室効果ガスの増減を管理していきます。これに関してちょっと簡単な動画を作成してみました。

各国の報告は正確を期す必要がありますが、その集計方式は国際的なガイドラインはあるものの、各国の集計方式の能力的な事情などもあり結果的に一律の基準になっていません。そこはどうしても各国の努力目標となってしまうため、強制力は発揮出来ずに、各国が独自にそれぞれの温室効果ガスの削減努力目標を国際的に提示すること事で、一律の削減目標は無理にしても、可能な限り透明性の高い目標を設定する事でみんな頑張りましょう、ということにしているのです。

各国の集計する温室効果ガスの排出量や吸収量は、国際的なガイドライン(IPCCによる)に沿って、網羅的に多くの分類について報告する必要があります。工場や自動車等のエネルギー分野、工業、農業、土地利用、林業、廃棄物、その他の間接的なもの、に大きく分けてそこからさらに細かい個々の排出量や吸収量を集計しています。

その詳細な報告書は、以下のリンクからご覧になれます。環境省が最終的に集計するのですが、その作業は外部委託されており、国立環境研究所の温室高ガスインベントリオフィスにて実施されています。年度毎に報告書が作成されます。

2019年度 日本国温室効果ガスインベントリ報告書

さて、大分前置きが長くなりましたが、この報告書には林業が特だしで掲載されています。ご存知の通り、森林は世界の陸域の約3割に分布しています。日本は特に国土の約7割を占めています。国土自体は狭いですが、割合としては森林大国なのです。

小学校で習いましたが、植物は主要な温室効果ガスである二酸化炭素を吸収して酸素を排出します。つまり、吸収源となっています。森林の分布や種類とその量を集計することは、どの程度温室効果ガスを吸収できるのかの能力を測定することになります。

2003年以降、日本の森林による温室効果ガスの吸収量は減少傾向にあります。これは戦後の植林が、この年の前後から自給率を増してきており、日本の森林は今かなりの供給過多状況になっているとのことです。つまり日本の森林は過去の人工林の造林が育ちきってしまい、吸収量が延びずに減少に転じてしまっている状況なのです。

日本の森林の現状(森林・林業学習館)

これは世界に比べても特異な状況であり、世界の主に熱帯の途上国は、WWFによると「毎秒サッカー場にして36個分の面積が消失」していると言われています。これは農地転用や焼き畑、違法な森林伐採などがありますが、最近ニュースでも有名になった米国カルフォルニアや豪州での大規模な森林火災にもよります。

それに加えて一方で、日本は森林が育った状態となっていて、今後は間伐や適切な森林経営に従って森林を有効活用しなければいけない時期と言われています。実は、この事実は意外にも知られていない気がします。

林業自体が最近担い手が少なくなってきており、日本の林野庁も予算の関係から中々思い切った政策も問題自体のアピールも出来ない現実があるのです。しかしながら、わかっている人はわかっていて、違法な業者が監視の届かない事を良い事に、日本国内においても違法伐採が増えてきている事実があります。

日本にもあった違法伐採!宮崎県は無法地帯?

日本の良質な木材が国外に違法に出ているという噂も聞こえてきます。こうした事実を前に人手が少なくなってきている林業を活性化しようと頑張っている活動もあるのですが、業界全体に活気がないように思います。これは林業の商売の参入が農業以上に垣根が高いし、かつ見返りが少ない事になると思われます。

このような状況を把握しながら、世界の森林を守り、日本の森林を適切に管理するための枠組み形成や管理ツールをどのように合意形成しながら整備できるか?という難題にここ最近取り組んでいます。

世界の森林を守る事で言えば、日本の高度な監視技術を活用して南米アマゾン、インドネシア、中央アフリカ(主にコンゴ民主共和国)の3大熱帯雨林地域の森林消失を防がねばなりません。これらの国は新興国あるいは発展途上国であり、自分たちでこれらの森林を管理する技術を十分に持ち合わせていないので、先進国が協力して資金や技術を提供していく必要があります。

日本では、JICAが技術協力によって以前からこれらの国々に対して森林の管理の手法とその設備投資を支援してきました。日本以外でも、欧米各国の援助機関がこぞって投資しています。

ブラジルにおいては、アマゾンにおいて違法伐採が多く、広大な土地なので取り締まるための人的リソースが中々工面できるものではありません。そんな中で日本からJCIAとJAXAが共同で開発した、人工衛星による森林の伐採検知システムを導入することによって違法伐採の減少に貢献出来ました。

こうしたツールを使って世界に貢献すると同時に、日本の森林の最適経営も行っていかなければなりません。日本の森林は、気候変動監視の吸収量として、防災の面においての風害や水害を守るための防水風林として、さらに加工木材の原料としての森林を考えながら、適切な森林経営が必須になってきている時代なのです。

最近では、ドローンやUAVを使った森林状況の調査が促進されています。林業業界を活性化させるべく、異業種であるGISのコミュニティやセンシング技術を使ったコミュニティが参入しつつあるのです。林業に長く従事されている方もおっしゃっていました。「我々も意識を変えていかないといけない時代になった。もっとより多くの他分野のコミュニティと連携して、林業の多様な在り方を考えていかなければならない」と。

気候変動と森林はなんとなく関連があると思われていますが、その中身は大変複雑で、かつ根が深い課題が多く詰まっています。SDGsで言えば、ゴール13及び15を一緒に関わる課題ですが、それだけにチャンスと信じています。

こうしたグローバルにも国内にも課題に取り組むチャンスがある気候変動と森林に対してより多くの方が関心を持って関わってくれる事を願っています。

 


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