アジアモンスーンの変動による洪水被害の拡大

Pocket

九州では梅雨の梅雨前線により線状降水帯が発生し、集中豪雨による洪水被害が続いています。

近年は「観測史上初」とか、「過去50年以内に例を見ない」などという表現が多く出てくる程の異常な降水量であり、地元の方々も経験したことのない大雨がここ数年続いているようです。

通常、降水量は目的別に1時間雨量、3時間雨量、12時間雨量、24時間雨量、振り始めからの積算雨量、という形で目的別に使い分けられます。

例えば、都市のゲリラ豪雨では30分から1時間程度の集中豪雨ですので1時間雨量が使われます。

普通夏の午後によくある雷雨で大体1時間で20~50mm以内ですが、これでいわゆるどしゃ降りの雨というものになります。1時間50mmを超えると、低地での浸水やがけ崩れの危険が高まります。

今回の九州の豪雨の場合、梅雨前線により形成される積乱雲が、同じ場所で次から次へと生成しては消えていくパターンとなっており、1時間でも50mmを超える雨量ですが、それが3時間以上で観測史上1位の降水量となっている場所が多いのです。

1時間でも50mmを超えるのに、それが何時間も続くほどの降水量になると土砂災害の危険や、河川の増水や氾濫の危険度も増してきます。実際に、九州のみならず全国で84河川で氾濫が確認できているとのことです。

なぜ、近年この時期に大雨が降る様になったのでしょうか?このメカニズムは「アジアモンスーン」というアジアにおける水と大気の循環系によって解明が進められています。

アジアモンスーンとは、インド洋からインドを抜けてチベット高原、中国を抜けて東端となる日本までを含む季節風変化のメカニズムです。

梅雨の季節になると、インド洋などの南の海と大陸の温度差が大きくなり、海上からの湿った空気が大量に大陸に流れ込みます。そして、その湿った空気が中国を抜けてはるか東の日本まで運ばれてくるのです。

アジアモンスーンのメカニズム図

©Zhanqing Li, et al

詳しい説明は専門書がたくさんありますから避けますが、この季節風による湿った空気が例年よりも大量に入ってきて、なおかつ北からの季節風と衝突して積乱雲を形成します。近年このアジアモンスーンの変化が大きくなっているのがわかっています。

今回、世界気象機関(WMO)によると、日本だけではなく、中国やインドでも洪水被害が起きている事が報告されています。インドでは北部にかけて最高レベルの洪水警戒が出ています。中国では6月から揚子江流域で洪水被害が多発しており、数百万人に影響が出ています。

気候モデルによると大気中のCO2濃度が増えると、地球上において強い雨の頻度が増え、弱い雨の頻度が減る、という予測を立てています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、特にこのアジアモンスーンの地域では今後の降水量変化予測として増加傾向にあるとしています。

実は、このアジアモンスーンの地域にはおよそ世界の人口の約60%が住んでいるとのこと。今後洪水被害が増加するとなると世界的にも深刻な状況になっていくかもしれません。

国内においては、「気候危機」の状況がようやく浸透し始め、自治体レベルでの対策が開始されています。こうした洪水被害に対する治水対策などはもはや「気候変動対策」として地域レベルでの動きになっています。

自然科学の分野でのこうした気候危機のメカニズムが解明されていますが、その科学の解明の成果が我々一般の生活にどう生かされるかが今問われていると思います。

IPCCの活動はまさにそうしたものでありますが、まだまだ一般への認知度や分かりやすさという観点で難が多いと思います。科学や研究の成果を分かりやすく誤解のない様に誰にでも説明できる機能が重要であり必要だと思っています。

参考文献

Aerosol and monsoon climate interactions over Asia

気象庁ホームページ

 

 

梅雨時期の呼吸法にも最適!

 

意識を変えて家で仕事しましょう!

 

あなたも情報発信を始めてみませんか?

情報発信ページを簡単に作成できるツール「カラフル」

 

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です