バッタの大襲来!

既にニュース等で話題になっていますが、東アフリカからインド、パキスタンにかけて「サバクトビバッタ」が大襲来しており、農作物被害が深刻な状況が続いています。

現在でも、地球上の陸地の約20%世界の人口の10分の1約60の国が、この昆虫の被害を受けています。直近の過去では2003年から2005年に大発生が起こっており、その際にはアフリカでの異常な大雨による大発生だったそうです。

サバクトビバッタは体が大きく、1つの群れで最大約1200平方キロメートルを移動し、移動速度は風速に近く、群れには1平方キロメートル当たり4000万から8000万匹が含まれているそうです。

2019年の終わり頃から始まった今回の大発生では、エチオピア、ソマリアの約7万ha、そしてケニアの約2400kmの牧草地に被害が出ました。

このサバクトビバッタの被害は、ご多聞に漏れず「人為起源による気候変動」が関係すると言われています。特に、Nature Climate Changeによると極端気象現象による大雨が関係しているとのこと。砂漠に降った雨がバッタの生息と成長に寄与しているようです。

世界食糧農業機関(FAO)では、各国からの情報や地球観測衛星データを使って気温と降雨量を予測し飛来の予報を行う、サバクバッタ情報サービス(Desert Locust Information Service:DLIS)によるモニタ情報を提供しています。以下、そこから得られた6月15日から7月7日までの予報マップです。

そして、以下は7月1-14日までの状況マップです。

なぜ、異常気象による大雨が起こったかというと、気候変動が原因と想定されるインド洋の海面水温の高温により同地方の熱帯のサイクロンが強大化したため、中東や東アフリカ地域で大雨をもたらしたと考えられます。

このバッタの被害は対岸の火事と言えるのかどうか、これからの気候変動による気温や降水量の変化によっては、生態系にも影響を及ぼすことは十分ありえますので、他人事ではなくなってくるかもしれません。

 

参考サイト

  • Wiki「サバクトビバッタ」:https://ja.wikipedia.org/wiki/サバクトビバッタ
  • 世界気象機関(WMO):https://public.wmo.int/en/media/news/desert-locust-threat-continues
  • 気候予測と応用に関する政府間機構(ICPAC):https://www.icpac.net/
  • 世界食糧農業機関(FAO)サバクバッタ情報サービス:http://www.fao.org/ag/locusts/en/info/info/index.html

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アジアモンスーンの変動による洪水被害の拡大

九州では梅雨の梅雨前線により線状降水帯が発生し、集中豪雨による洪水被害が続いています。

近年は「観測史上初」とか、「過去50年以内に例を見ない」などという表現が多く出てくる程の異常な降水量であり、地元の方々も経験したことのない大雨がここ数年続いているようです。

通常、降水量は目的別に1時間雨量、3時間雨量、12時間雨量、24時間雨量、振り始めからの積算雨量、という形で目的別に使い分けられます。

例えば、都市のゲリラ豪雨では30分から1時間程度の集中豪雨ですので1時間雨量が使われます。

普通夏の午後によくある雷雨で大体1時間で20~50mm以内ですが、これでいわゆるどしゃ降りの雨というものになります。1時間50mmを超えると、低地での浸水やがけ崩れの危険が高まります。

今回の九州の豪雨の場合、梅雨前線により形成される積乱雲が、同じ場所で次から次へと生成しては消えていくパターンとなっており、1時間でも50mmを超える雨量ですが、それが3時間以上で観測史上1位の降水量となっている場所が多いのです。

1時間でも50mmを超えるのに、それが何時間も続くほどの降水量になると土砂災害の危険や、河川の増水や氾濫の危険度も増してきます。実際に、九州のみならず全国で84河川で氾濫が確認できているとのことです。

なぜ、近年この時期に大雨が降る様になったのでしょうか?このメカニズムは「アジアモンスーン」というアジアにおける水と大気の循環系によって解明が進められています。

アジアモンスーンとは、インド洋からインドを抜けてチベット高原、中国を抜けて東端となる日本までを含む季節風変化のメカニズムです。

梅雨の季節になると、インド洋などの南の海と大陸の温度差が大きくなり、海上からの湿った空気が大量に大陸に流れ込みます。そして、その湿った空気が中国を抜けてはるか東の日本まで運ばれてくるのです。

アジアモンスーンのメカニズム図

©Zhanqing Li, et al

詳しい説明は専門書がたくさんありますから避けますが、この季節風による湿った空気が例年よりも大量に入ってきて、なおかつ北からの季節風と衝突して積乱雲を形成します。近年このアジアモンスーンの変化が大きくなっているのがわかっています。

今回、世界気象機関(WMO)によると、日本だけではなく、中国やインドでも洪水被害が起きている事が報告されています。インドでは北部にかけて最高レベルの洪水警戒が出ています。中国では6月から揚子江流域で洪水被害が多発しており、数百万人に影響が出ています。

気候モデルによると大気中のCO2濃度が増えると、地球上において強い雨の頻度が増え、弱い雨の頻度が減る、という予測を立てています。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、特にこのアジアモンスーンの地域では今後の降水量変化予測として増加傾向にあるとしています。

実は、このアジアモンスーンの地域にはおよそ世界の人口の約60%が住んでいるとのこと。今後洪水被害が増加するとなると世界的にも深刻な状況になっていくかもしれません。

国内においては、「気候危機」の状況がようやく浸透し始め、自治体レベルでの対策が開始されています。こうした洪水被害に対する治水対策などはもはや「気候変動対策」として地域レベルでの動きになっています。

自然科学の分野でのこうした気候危機のメカニズムが解明されていますが、その科学の解明の成果が我々一般の生活にどう生かされるかが今問われていると思います。

IPCCの活動はまさにそうしたものでありますが、まだまだ一般への認知度や分かりやすさという観点で難が多いと思います。科学や研究の成果を分かりやすく誤解のない様に誰にでも説明できる機能が重要であり必要だと思っています。

参考文献

Aerosol and monsoon climate interactions over Asia

気象庁ホームページ

 

 

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世界の森林資源評価報告(FRA)2020年版の概要

先日、世界食糧農業機関(FAO)が世界の「森林資源評価報告(FRA)2020年版」というものを発行しました。

FRAとはForest Resource Assessmentの略です。

FAOは1946年から世界の森林資源について、定期的にメンバー国からの報告をもとに評価報告を実施してきました。

定期的に世界の森林資源量の傾向がわかる事によって、各国や世界の様々な森林資源の活用や森林化のための意思決定の参考となる情報として活用されています。

もちろん、最近では気候変動における森林の温室効果ガス(特に二酸化炭素)の吸収における役割が大変重要視されていますので、このFRAも、ますます重要な情報となってきているのです。

1990年からは5年毎に報告を実施しており、今回の2020年の報告には1990年から2020年のデータが使用されています。

森林は各国ごとにその定義が異なる事が多いため、FRAではFAOが187の国や自治区から出てくる森林の定義や集計手法などの情報を統一基準に定めています。

今回は、その報告のエッセンスをご紹介したいと思います。報告書は以下のサイトにあります。

森林資源評価報告(FRA)2020年版



森林は世界の陸地のおよそ三分の一を占めている

森林の面積はおよそ40億haでありおよそ世界の陸地の31%です。その内、45%が熱帯林であり、北方林が27%、温帯林が16%、亜熱帯林が11%となっています。

およそ54%の森林がたったブラジル、中国、ロシア、米国、カナダの5つの国で占められています。

森林は減少しているが、その割合は減ってきている

1990年以降世界では1.78億haの森林が減少しました。これはおよそ日本の4.6倍の面積です。

「森林減少」と言うと伐採による減少が主ですが、「正味の森林変化」は植林や天然林の拡張なども含められ、それらのバランスで全体の評価を見ることになります。

経年変化では、1990年から2000年は毎年780万haの減少、2000年から2010年は毎年520万haの減少、2010年から2020年は毎年470万haの減少となっており、減少率が減ってきていることがわかります。

アフリカが正味の森林減少では最も大きい

地域別にみると、2010年から2020年の間ではアフリカが390万haともっとも大きな森林減少となっています。南米は260万haの減少で二番目に大きな減少となっている。

アフリカはここ30年間で森林減少が増加している。南米はこの10年間で半分以上減少率が減っています。

アジアは2010年-2020年で最も森林増加となっています。オセアニア地域と欧州がそれに続いています。しかし、アジアと欧州の増加率は2000-2010年に比べるとかなり減っています。

9割以上の森林は天然再生している

およそ97%(37.5億ha)の森林は天然再生しており、7%(2.9億ha)が植林となっています。

過去30年間で天然再生の割合は減少しています。一方で植林は増加しています。

7億haが保護区となっている

南米が約31%が保護区となっており最大の地域となっている。1990年以降約1.9億haの森林が新たに保護区となりました。しかし、近年その増加傾向は小さくなってきています。

原生林は約11億ha

ブラジル、ロシアとカナダがその内の約61%を占めています。原生林も1990年以降約8100万ha減少しているが、近年はその減少率が減っています。

20億haの森林において管理計画がある

欧州が96%で最も高く、アジアが64%、北中米が59%、オセアニア地域が31%、アフリカが24%、南米が17%となっています。

森林火災は熱帯地方で広がる攪乱

昨年から今年はカリフォルニア、ブラジルとオーストラリアの林野火災がニュースでも大きく取り上げられて大規模で記憶に新しいですが、森林火災では単に木が燃えるだけではなく、そこに住む様々な生態系も消失させてしまいます。

2015年には9800万haの熱帯林が火災の影響を受けました。これは全世界の森林のおよそ4%に想定します。

多くの森林は国有林であるが私有林は増加している

73%が公的な所有物であり、22%が私的所有となっています。私有林の割合がもっとも多いのはオセアニア地域でおよそ48%、北中米と南米が同等で40%強となっています。

1990年から国有林の権利を民間ビジネスや研究所や各機関、そして少数民族や不部族に譲渡する動きが増加しています。

世界の森林成長率は減少している

1990年は5600億立方メートルであった世界の森林の総成長量は、2020年には5570億立方メートルに減少しました。これは森林面積が減少したことによります。

一方で、単位面積当たりの成長量は逆に増加している。1990年は132立方メートルから2020年は137立方メートルに増加しました。

世界の森林はおよそ606ギガトンの生体バイオマスを保有しています(地上と地下を合わせて)。59ギガトンは枯死のものです。トータルのバイオマスは1990年から減少していますが、単位面積の量は増加しています。

森林の炭素蓄積量が減少している

森林の炭素蓄積量は、44%が木の生体バイオマス、45%が土壌生体物質、残りが枯死木、リター(落葉落枝の堆積物)から構成されています。

炭素蓄積量は1990年は668ギガトンから2020年は662ギガトンと減少しています。一方で、炭素密度は1ha当たり1990年は159トンから163トンに増加しています。

全森林の約30%が生産利用されている

世界の11.5億haが主として原材料としての木の生産のために利用されています。その他に7.5億haが原材料を含む多目的に利用されています。

1990年以降、原材料を主とする利用は安定していますが、多目的利用は減少傾向にあります。

全森林の約10%は生態系保護に利用されている

1990年は1.1億haだった生態系保護区としての森林も、2020年は4.2億haに増加しました。しかし、近年その増加率は減ってきています。

土壌と水系を保護する森林は増加している

1990年は1.2億haだった土壌と水系の保護区としての森林は、2020年は3.4億haに増加しました。

1.9億haの森林は公共サービスとなっている

レクレーション、観光、文化保護、研究林、スピリチュアルサイトとして約1.9億haの森林が確保されています。その割合は年々増加しています。

“This translation was not created by the Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO). FAO is not responsible for the content or accuracy of this
translation. The original [Language] edition shall be the authoritative edition.”



以上が報告書のエッセンスですが、いかがでしたでしょうか?

私が一番関心あるのが、やはり気候変動に絡んで、森林の炭素量の蓄積量がどのように変化しているかです。減少はしているものの、減少の割合も減少しているとのことで少しづつ各国が努力をし始めているのかな?と思われます。

しかし、まだまだ足りない、ということでしょう。気候変動で森林は一つのわかりやすくかつ重要な指標になります。しかし、それを管理したり削減を止めるのは、やはり難しいのです。

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